どんな個性を持つ人でも社会の一員として居場所を見つけ、活躍できる社会を目指して

  • 投稿:2024年07月16日
どんな個性を持つ人でも社会の一員として居場所を見つけ、活躍できる社会を目指して

発達障害・精神疾患の障害年金専門の社労士として、障害年金の受給はじめ相談者の社会復帰に向けて様々なサポートを行う川口社会保険労務士事務所。

今回は、代表・川口直晃さんに、発達障害や精神疾患を抱える方々の支援をはじめたきっかけと、様々な特性を持つ個人が活躍できる社会を目指していく上で大切なことについてお話を伺いました。

経験者だからこそ理解できる発達障害・精神疾患の「生きづらさ」に寄り添う

ー まずは川口先生が発達障害や精神疾患を抱える方々を支援するに至ったきっかけについて教えていただけますか?

私自身、20代のサラリーマン時代に精神疾患を経験したことがきっかけです。

もともと対人関係でストレスを感じる場面が多く、就職活動でも苦労しました。職場の人間関係に悩んでいても、せっかく採用してもらえたこの会社を辞めたら、他に雇ってくれる場所はないのではないかと頑張り続けた結果、うつ病を発症。

頑張りたくても頑張れない状態で、当時は障害年金や社会保険についての知識もほとんどなく、今後の生活への不安もありました。精神疾患は目にわかるような症状が出るわけではないため、周囲から適切な支援を受けられないこともあり、存在意義を失っていくような日々でした。

復帰に向けて考えるなか、生きづらさを抱えながら社会で働くためには、前と同じではなく、自身も何かしらの変化をしていかねば……そう思っていたときに、候補として挙がったのが社労士資格の取得でした。自身の経験を活かして、「精神疾患や発達障害などの個性を持った人でも働きやすい職場環境を作りたい」という想いを抱き、勉強をはじめました。

ー 当時感じていた「生きづらさ」について、具体的に教えていただけますか?

一番辛かったのは、悩みやしんどさをなかなか理解してもらえなかったことです。一度、体調が回復して休職から復帰した際、復帰初日に「気持ちを強く持つんだよ」「いつまでも薬を頼らないようにね」と言われたときの気持ちは今も覚えています。

相手も決して私を傷つけようと言ったわけではないとわかっていても、正しく理解してもらえないのは辛いことでした。

やはり発達障害や精神疾患は、経験した者にしかわからない悩みやしんどさがあると思っていて、社労士として働き始めてからも、相談者様の「気持ちを理解する」という部分はとても大事にしています。

ー 精神疾患を経験してから、どのように社会復帰されたのですか?

一時期は外に出ることさえも辛い状況でしたが、担当の医師から少しずつでもいいから外に出るよう勧められ、最初は近場の散歩からはじめ、徐々に遠くへ行けるようになり、慣れてきたら喫茶店へ入ってみたり、そこで資格の勉強をしてみたり。本当に一歩ずつでしたが、日常生活が送れるようになっていきました。 

実は社労士の資格取得後に、実務経験を積むために社労士事務所にサラリーマンとして働いたことがあったのですが、そこでも対人関係がうまくいかず、それならば、自身で裁量を持ち、強みを活かせる働き方をしていこうと決意し、独立・開業に至ります。

個人と組織が対話を重ね、個々の特性を正しく理解し、働きやすい環境をつくる

ー 発達障害と精神疾患、それぞれの違いと関わり方について改めて教えていただけますか?

そもそも発達障害は生まれ持った特性であり、治るものではないので、それぞれの特性とうまく付き合っていかなければなりません。本人の特性を活かすことができる、理解ある職場に出会うことができればいいですが、周囲からの配慮がなされないまま仕事を続けることによって、鬱病などの精神疾患を発症し、社会での活動がより難しくなるケースも多いんです。

まずはこうした二次障害を引き起こさないよう、ストレスを感じにくい環境整備が必要です。

すでに二次障害を引き起こしている場合、まずはその状態を治すことが先決ではありますが、仕事への希望や、次の居場所が見出せるからこそ、鬱などの症状が治っていくこともあります。治療に専念すると同時に、社会復帰後の生き方・働き方の支援を行うことも重要だと感じます。

ー 特性を持つ方々が働きやすい職場には、どのような環境整備が必要なのでしょうか?

まずは、 発達障害や精神疾患への正しい知識と理解が必要だと思っています。企業側の声としてよくお聞きするのは、「配慮はしたいんだけれども、何にどうやって配慮していいのかわからない」ということ。

特性を持つ当事者側も、自身の困り事を適切に伝えるために準備できることはあるはずです。特性は人それぞれで、例えば耳からの情報を処理することが難しい方であれば、会社側に「耳からの情報を処理することは難しいので、紙に書いて渡してください」とお伝えすることで、企業側も配慮しやすくなります。

コミュニケーションの不足が、結局は企業側が配慮しようにも配慮できない状況を生んでしまうので、個人と企業が対話を重ね、 発達障害や精神疾患から起こる苦手な部分や困りごとを減らし、得意な部分を発揮できる状態をつくること。そうすることで、双方にとって働きやすい環境になるのだと思います。

ー より社会全体で考える必要があるテーマだと感じますが、社労士の役割をどのように捉えていらっしゃいますか?

私は現在、障害者年金の請求をサポートさせていただいていますが、例えば行政機関で障害者手帳をもらうところまで進んでも、年金まで辿りつかないことが多々あるんですね。

働くことができなくなったときに、精神的ストレスだけでなく、直近の生活や将来への見通しが立てられないといった金銭面での不安も抱える方がほとんどです。その際、障害年金や傷病年金、労災等の社会保険について少しでも知っていると、先のことに希望を見出すことができ、不安も和らぐと思うんです。

そのため、年金制度を知らない方々や、「私の障害では年金はもらえない」と諦めている方に対して正しい情報を発信していくことも、社労士としての社会的な役割と捉えています。

また、 障害年金の申請の際、医師が障害年金の受給は難しいと断言されるケースがあります。そのようなケースでも当事務所にご相談いただいて、障害年金を受給できたケースもあります。申請者は医師から「無理」と言われると諦めてしまう。発達障害や精神疾患の症状は周囲からはわかりづらく、医師や社労士によって理解度も様々です。より適切に判断していただけるよう、相談者様の立場に立って、主治医の先生とも連携しながらサポートを行っています。

まだまだ氷山の一角。過去の自分のように、しんどい状況にいる人たちの一歩を応援したい

— 川口先生の今後のビジョンを教えてください。

障害年金の請求はゴールではなく、年金受給後にどのように生きていくかこそが大切だと思っています。今後はキャリアコンサルタントとしての知見も活かしながら、相談者様の再就職支援に本格的に関わっていきたいです。

開業して6年が経ちましたが、当事務所に相談へ来てくださる方々はまだまだ氷山の一角にすぎません。部屋から出ることすらできずに、一人で悩みを抱えている方や、本人への関わり方に悩むご家族がたくさんいらっしゃいます。そういった方々にこそ出会いたいと思っています。

そのために、自治体の行事やイベントで講演の場をいただいたり、ピアサポートの活動やひきこもりの会に参加してご家族の方に障害年金の制度や自身の経験を伝えたり、届ける方法を模索しているところでもあります。最近は、SNSも活用しての情報発信にも力を入れています。

— 川口先生が自身の経験を発信すること自体が、発達障害・精神疾患を抱える方々の希望になっていくのだと感じました。

私の生き方や働き方が、過去の私のように苦しんでいる人にとって、働き方のヒントになればいいなと思っています。

もちろん、人によって特性は様々なので、全員に合う働き方ではないとも思いますが、私が体験したことをオープンにすることによって、誰かを勇気づけることができたり、新しいことにチャレンジするきっかけになれたり、そんな存在であれたら嬉しいです。発達障害や精神疾患はじめ、様々な個性を持つ方々が、自分らしく社会と繋がり、活躍していける社会を目指して、尽力していきたいと思います。